新しいペットロボットが発売され,しゃべる機械であるスマートスピーカーが一般家庭で普通に活躍しています.世の中は,人工知能ブームからすでにHAIの時代に入ってきたのだなと最近強く思います.HAIシンポジウムは2006年に慶應大学日吉キャンパスで開催されて以来,今年で12年目に入り,毎年100名超の参加者が様々な内容の密な議論を交わしてきました.HAIシンポジウムの役割もまた,新たな場面にさしかかっているのかもしれません.
さて,今年度はじめてHCGシンポジウムと連携で12/11~15まで金沢歌劇座で連続開催することになりました.HAIシンポジウムはこれまで10年以上開催されてきましたが,学会に属したり他シンポジウムや研究会との連携などは基本的な方針として行ってきませんでした.従って,今回の試みは初めての機会となりますが,HAI研究の新しい方向性の模索としての大きな刺激の一つとなればと願っております.
HAIシンポジウム2017では,プログラム委員会を中心に,新しく以下の3つの企画を用意しました.
- チュートリアル:HAIを科学研究として成立させるための作法[link]
- 特別セッション:自動車の知能化とヒューマンエージェントインタラクション
- HCGシンポジウムとの共同パネルセッション:「HAIとHCGの相違点,共通点」
それぞれ,HAI研究のお作法について,HAI研究の応用の最先端について,そして新しいHAI研究に向けてヒューマンコミュニケーション研究(HCG研究)との関係性についての企画になっており,HAI研究に関わる参加者が興味を持ってもらえるような内容になればと思っております.
また,今年度は,表彰に関して新しい試みを2つ行いました.特に優れた学生の発表に対して,「奨励賞」という新たな枠を設けました.この趣旨は,若手のモチベーションをあげ,若手が集まるコミュニティにしよう.HAIを活性化させようという意図があります.さらに,これまで表彰されるまで,1年かかっておりましたが,卒業してしまう学生にとっては,なるべく在学中に表彰されることに高い意義があると考え,評価を行う委員の方々に無理をお願いして会期中に表彰を行う試みを実現しました.もらえるものは早いほうがよいですよね? 2ヶ月前になりますが,今年10月にHAIの国際会議The 5th International Conference on HAI(HAI2017)が10月17〜20日にドイツBielefeldで開催されました.ここで,これまでにHAIシンポジウムで活躍した若手研究者がBest Paper賞を受賞しました.また,昨年に引き続き若いHAI研究者らがNGHAI(Next Generation HAI) Workshop を企画しました.HAIシンポジウムから世界へ,若手研究者らが活躍している現状もこれまでの10年以上におけるHAIコミュニティの成果ではないかと思います.ぜひ今年のHAIシンポジウムでも暴れていただいて,その成果をもって世界で活躍し,HAIの研究を広げていっていただければ,このシンポジウムもより意義があるものとなると思っています.HAIコミュニティは若手の活躍を期待し応援します.
HAIシンポジウムはたった二日間の短い時間ですが,非常に密度の濃い時間となると思っています.この二日間を十分に楽しんで帰っていただければ嬉しく思います.
対象分野
HAIに関する理論的・実証的研究,各種応用システム開発事例などを広く募集します.たとえば,以下のようなテーマが該当しますが,これに限定されるものではありません.
- 人とインタラクションを行うエージェント/ロボットの設計・実現方法
- エージェント/ロボットを介した人同士のコミュニケーション
- エージェントによるヒューマンインタフェース
- 認知科学,社会心理学,進化心理学,発達心理学におけるHAI
- エージェント/ロボットの倫理
- 人とエージェント/ロボットの相互適応
- 適応・学習を可能にするインタラクションの設計
- エージェント/ロボットのアピアランス,表情,ジェスチャーの設計
- 意図,エージェンシーの認知,アニマシー知覚
- 人とエージェントの関係性
- エージェント/ロボットの身体性
- インタラクションを可能にする知能の解明と実現
- インタラクションを通して生まれる知能の解明と実現
- 認知発達ロボティクス
- 記号創発ロボティクス
- HAIの要素技術…ユーザ状態の推定/学習,エージェントの適応/学習,エージェントの音声合成/認識
- 人工知能技術,深層学習などを用いたエージェント/ロボットにおける知能の理解・設計およびインタラクションのデザイン
- CMC(Computer Mediated Communication)環境における身体的なインタラクション
- HAIの応用事例など
過去のプロシーディングス(こちら)もご参照ください.