運営委員長挨拶 片上大輔(東京工芸大学)
HAIシンポジウムは,2006年に慶應大学日吉キャンパスで開催されて以来,今回で13年目にあたります.昨年は153名の参加者に参加いただき,盛況のうちに無事終えることができました.まず皆様にお詫びしなければならないのですが,今年は,国際会議HAI2018が開催場所の変更の影響もあり12月に開催される関係で,HAIシンポジウムが毎年開催されている12月を変更して,年を越して3月に行われることになりました.12月を予定されていた方には,大変ご迷惑をおかけいたしました.今年度は新たな開催場所として専修大学(生田キャンパス)で行われます.ぜひご参加ください.
昨年度は,表彰に関して新しい試みを2つ行いました.特に優れた学生の発表に対して,「奨励賞」という新たな枠を設けました.この趣旨は,若手のモチベーションをあげ,若手が集まるコミュニティにしよう.HAIを活性化させようという意図があります.さらに,これまで表彰されるまで,1年かかっておりましたが,卒業してしまう学生にとっては,なるべく在学中に表彰されることに高い意義があると考え,評価を行う委員の方々と協議して会期中に表彰を行う試みを実現しました.今年も委員の方々と協力をして,続けてやっていきたいと思います.
今年の目標としては,企業との連携を強化することを検討しています.2017年に人工知能学会での企画セッション「HAI,その心とは?」を企画した際に,企業の方が非常に沢山参加していただきまして,質疑応答においてHAI業界全体に向けて沢山コメントいただきました.企業からのHAIへの期待を強く感じたとてもよい機会だったと思います.HAIシンポジウムは,企業とHAI研究者との連携強化の場であってもよいと思いますし,HAIシンポジウムで面白い発表をした研究者と企業との共同研究が始まってもよいと思っています.まずは,企業とHAI研究者とのコラボレーションの架け橋となるような場をつくりたいと思っています.その最初の試みに,企業の方も,HAIの研究者もぜひご参加ください.
話は変わりますが,新年に思いがけずオペラを鑑賞する機会がありました.人間が持つ,愛,信頼,裏切り,共感,協調,駆け引きなど,人間の基本的で日常的なインタラクションが人間の本質だと改めて気付かされました.一方で,エージェントやロボットにおいては,まだそのようなやり取りは人間に及んでいないように思われます.世の中は,人工知能ブームからすでにHAIの時代に入ってきていますが,上記を言い換えれば,HAI研究分野には,まだまだ無限のブルーオーシャンが広がっているとも言えます.HAIの研究分野において,それぞれの新たな視点で独自に切り拓いて行って欲しいと思います.
HAIシンポジウムでは,これまで,毎年約120~160名(延べ1600~2000人)の参加者が参加し,様々な内容の密な議論を交わしており,工学,認知科学,社会心理学,発達心理学,言語学,コミュニケーション学,などなど様々な領域において研究が行われてきましたが,HAIの研究分野はこれに限定されるものでもありません.HAIの研究の発展をさまたげないためにも,さまざまな研究分野の価値観を尊重し,共有し,深化させていくことが重要かと思います.
今年も,何か新しい研究に出会えるかも知れないとわくわくしております.HAIシンポジウムはたった二日間の短い時間ですが,毎年非常に密度の濃い時間となっています.この二日間を十分に楽しんで帰っていただければ嬉しく思います.
対象分野
HAIに関する理論的・実証的研究,各種応用システム開発事例などを広く募集します.たとえば,以下のようなテーマが該当しますが,これに限定されるものではありません.
- 人とインタラクションを行うエージェント/ロボットの設計・実現方法
- エージェント/ロボットを介した人同士のコミュニケーション
- エージェントによるヒューマンインタフェース
- 認知科学,社会心理学,進化心理学,発達心理学におけるHAI
- エージェント/ロボットの倫理
- 人とエージェント/ロボットの相互適応
- 適応・学習を可能にするインタラクションの設計
- エージェント/ロボットのアピアランス,表情,ジェスチャーの設計
- 意図,エージェンシーの認知,アニマシー知覚
- 人とエージェントの関係性
- エージェント/ロボットの身体性
- インタラクションを可能にする知能の解明と実現
- インタラクションを通して生まれる知能の解明と実現
- 認知発達ロボティクス
- 記号創発ロボティクス
- HAIの要素技術…ユーザ状態の推定/学習,エージェントの適応/学習,エージェントの音声合成/認識
- 人工知能技術,深層学習などを用いたエージェント/ロボットにおける知能の理解・設計およびインタラクションのデザイン
- CMC(Computer Mediated Communication)環境における身体的なインタラクション
- HAIの応用事例など
過去のプロシーディングス(こちら)もご参照ください.