HAIシンポジウム2007開催にあたって |
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この10年間で,一般の家庭に,擬人化エージェントとロボットが普及し始めました.その代表格は,オフィスソフト上に表れるMicrosoftエージェント,ペットロボットのAIBO, そしてお掃除ロボットRoomba(ルンバ)でしょう.オフィスアプリケーション上にイルカの擬人化エージェントが現れるのを見た方は多いでしょうし,残念ながら生産中止になったAIBOもエンタテイメントロボットが一般家庭に普及する礎を築いたことは,誰も否定できないすばらしい功績です.また,お掃除ロボットRoombaは,世界で売り上げが200万台以上あり,現在も製品開発が続けられている一般家庭に最も普及している実用的ロボットの一つです. このように,これまで大学や企業の研究者などのごくごく限られた人たちしか接することがなかった擬人化エージェントやロボットが,広く一般のユーザと接する,つまりインタラクションをもつ状況で起こる様々な問題に対して,その工学的解決に挑戦する新しい研究分野が,HAI:ヒューマンエージェントインタラクションです. 注目して欲しいのは,HAI:ヒューマンエージェントインタラクションにおいて,”エージェント”とは,擬人化エージェント,ロボット,人間の3つを意味することです.よって,HAIの扱うインタラクションは,人間-人間の間のインタラクションを含む,以下の3つのインタラクションを指すことになります.これらの3つのインタラクション設計の原理を探り,共通した方法論の開発をHAIは目指します.
さて,実際に,一般のユーザがエージェントとインタラクションをもつようになると,どのようなことが起こるでしょうか.そこでは,以下のような様々な興味深い研究課題が考えられます.
HAIは,上に挙げた課題に対し,工学,認知心理学,社会科学などの様々な分野から横断的に,その解決に挑戦する新しい研究開発分野です.実際にHAIは,人間とエージェント間のインタラクション設計と呼ばれるアプローチをとります.インタラクション設計とは,以下の方法であり,従来のエージェント自身の設計から,人間とエージェントの関係の設計までの広いスコープをもちます.
HAIは,まだ確立された統一的方法論があるわけではなく,ケーススタディの段階にある感は否めませんが,多くの大変興味深い成果が出始めています.そして,HAIは,少なからず閉塞感のただよう現在の人工知能,ロボット,認知科学研究に対し,これまでにない興味深い研究分野を提供すると確信しています.また,日本の研究者が世界に発信する新しい研究分野として育つことを狙っています. これまでの,エージェント,ロボット研究・開発には,人間とのインタラクションの視点が不十分だったと物足りなさを感じていた研究・開発者の方は,ぜひHAIシンポジウムで共に建設的な議論を楽しみ,HAIという新しい研究フロンティアの開拓に参加されることを願います. 2007年12月5日
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