HAIシンポジウム2013開催にあたって

 HAIシンポジウム2013にご参加頂き,誠にありがとうございます.


本シンポジウムは,HAI(Human-Agent Interaction)に興味を持つ研究者が,人工知能学会や電子情報通信学会,情報処理学会等の研究会で定期的に企画していたHAIの合同セッションに端を発します.これが2006年以降は現在のような独立したシンポジウムとして開催される形となり,毎年多くの参加者の方々のご支持を頂きながら開催を重ねた結果,今年で8回目を数えるまでに至りました.さらに今年からは,本シンポジウムとは別に,新たに国際会議“International Conference on Human-Agent Interaction (iHAI)”も開催されています.


 情報システムの多様化と対話型処理の普及により,人と情報システムとのインタラクションは多彩かつ重要になる一方ですが,人によるインタラクションの方略は,対象がどのような存在であるかということにも左右されると考えられます.したがって,特にそれが人にとって何らかの意味で“人らしさ”を感じさせるような擬人性を持つ場合には,その場合特有の人のインタラクション方略をうまく活用することにより,インタラクションの形態や円滑化の点で通常のインタラクションとは異なる新たな方法論を生み出せる可能性が期待されます.HAIの研究は,このような期待に基づいて,人間自身はもちろん,ロボットや擬人化エージェント,さらにはぬいぐるみや愛着のある道具のようなものまで,およそ人が擬人性を感じ得る対象すべてを“エージェント”と呼び,エージェントと人の間の様々な形態のインタラクションを対象に,擬人性の要因や利点,それを活用したエージェントやインタラクションのデザイン等について,個々のアプリケーションから対象のカテゴリやドメインに依存しない普遍的なレベルまで,様々な一般性を持った知見を求める試みであるといえます.


 本シンポジウムは,発足当時,このようなHAIという用語を,国内はもちろん,おそらく世界でも初めて冠したシンポジウムであったかと思いますが,最近は学会などでもHAIという言葉がテーマ名やセッション名として広く使われるようになり,HAIが研究分野の一つとして確立すると共に,これをテーマとする研究が着実に増えつつあることを実感します.本シンポジウムもこのようなHAI分野の発展の一翼を担ってきたものと自負していますが,回を重ねる毎に開催期間が延び,発表形式も多様化した結果,会場準備の負担が増加し,会場確保の点でやや不安の生じる状況となりつつあります.そこで今回は,会場に関する制約を減らし,今後様々な場所で開催可能な持続性のある開催形態を探るべく,開催形態自体はコンパクトながら,個々の研究についてはしっかり議論できる場の提供を目指しました.具体的には,発表形式を口頭発表とポスター発表の2つのみに簡素化し,開催期間も2日間に戻す一方,口頭発表とポスター発表のバランスを考えることで,それぞれの研究の性格に応じた議論の場の確保に努めました.この結果,一部の方々には発表形式の変更をご相談させて頂くことにもなりましたが,本シンポジウムでは,発表形式の違いは研究内容の優劣によるものではなく,ご本人の希望や研究の性格に応じた議論形態の違いによるものと位置付けておりますので,参加者各位には何卒その旨をご理解頂きます様,お願い申し上げます.


 HAIの研究課題には,工学, 認知科学,社会科学等,多様な分野にまたがる学際的な取り組みが重要となります.本シンポジウムが,HAIに興味を持つ学生や研究者の方々に分野を問わず幅広くご参加頂き,建設的で示唆に富む議論を楽しんで頂ける場となれば誠に幸いです.


2013年12月7日


角所 考 (HAIシンポジウム2013実行委員長)
竹内勇剛 (HAIシンポジウム2013プログラム委員長)