HAIシンポジウム2015開催にあたってのご挨拶

 10年前,みなさんは何をなさっていましたか?すでに研究に携わっていた方は,どんな研究テーマに取り組まれていましたか?初めてのHAIに関するシンポジウム開催となるHAIシンポジウム2006(12/12?13 慶応義塾大学日吉キャンパス「来往舎」)での発表の準備をしていました,という方もいれば,当時HAIなんていう概念や領域について全く知らなかったという方もいらっしゃるかと思います.学生の方ですと,まだ自分は中学生や高校生だったという方が大勢いらっしゃると思います.


 あのときからずっとこのHAIシンポジウムに参加してきた人,途中から興味をもって飛び込んできた人,先生に言われるままに発表することになってしまった人など,さまざまなきっかけを通して多くの人々が集まり,積極的に交流してきたことでHAI研究コミュニティはこの10年でとても大きく成長してきました.ところがその一方で,HAIがもつ面白さ故のある種の求心力が,いくぶん「内向き」の論点・視点に私たちを向わせてしまったきらいもあるように思います.もしかすると若い研究者のみなさんは,そんな印象をすでにお持ちだったりしているかもしれません.また普段はHAI研究コミュニティの中にはおらず,ときどき「外側」から私たちの研究に関心を寄せてくださっている方々は,どう現在のHAI研究コミュニティを評価しているのか,私たちはきちんと知っておくべきかもしれません.


 そこでHAIシンポジウム2015では10周年記念行事として特別企画を設け,これからの10年のHAI研究の主役になる新進気鋭の若手研究者らと,いつもHAI研究コミュニティの活動を「外側」から気に掛けてくださっているご高名な先生方,および黎明期からHAI研究コミュニティの発展に大きく寄与してきた先生方とのパネル討論を行います.これはきっと傾聴に値する議論になるだろうと予想できると共に,これからのHAI研究の向かうべき方向性を示す大きなマイルストーンになることが期待されます.


 そして口頭発表である一般セッションや,プログラム委員会が選定した数本の論文について重点的に議論することを目的とした討論セッション,実際のインタラクションを体験させたり,よりざっくばらんな議論ができるポスターセッションもいつものように行われます.言うまでもなく,これらのセッションで発表される研究こそが現在のHAI研究の基盤となっている貴重なものです.


 HAIシンポジウム2015のWebサイトのトップページでの挨拶の最後に,『このHAIシンポジウムは,HAI研究者のためのものです』と私は書きました.これを再度申し上げたいと思います.このHAIシンポジウムは,HAI研究者のためのものです.ここに参加しているすべてのみなさんがこのシンポジウムの主人公です.この2日間,互いの経歴・キャリアの違いも専門分野の違いも放っておいて,おおいに議論し合いましょう.


2015年12月5日


竹内勇剛 (HAIシンポジウム2015運営委員長)