運営委員長挨拶 大本義正(静岡大学)
国内会議でヒューマン・エージェント・インラクションを扱うHAIシンポジウムは今回で17回目を数えることになりました。最近は新型コロナウイルスの影響で、現地開催を断念したり一部をオンライン発表としたりする対応を実施しながら続けて参りました。国際会議であるACM Human-Agent Interactionは今年で10回目の開催となります。こちらは、2021年には国際会議のランキングであるCoreランクでBになっており、ますますヒューマン・エージェント・インラクションという分野の注目度が高まっているといえます。そのような中、小松孝徳先生より引き継いで運営委員長となりまして、身の引き締まる思いです。
最近ではAIによる画像生成がちまたを賑わせているようです。よくできたものが美術品評会のデジタルアート部門で1位を取り、物議を醸したことをご存じの方々も多いかと思います。AIが仕事を奪うという話はずいぶん前から出ている話ですが、芸術作品にまでそれが広がってきた、と考えるべきか、それともさらに先に進むためのツールとしてAIを捉えるべきか、難しい問題です。いわゆる「エージェント」も似たような問題をはらんでいます。画像生成は人間の能力の1つに過ぎませんが、エージェント(代理人)という言葉通り、人間そのものを代替してしまうような「エージェント」の方が問題はより深刻かもしれません。ヒューマン・エージェント・インラクションの研究を通して、よりよい未来に進むことができればと願っています。
今年は久しぶりに全面的に対面で実施する予定です。新型コロナウイルスを通じて、オンラインはオンラインの良さがあるということが浸透してきたところではありますが、あえてオンラインを廃した対面でのコミュニケーションを行う中で、今一度、対面インタラクションの特徴を感じてもらおうと思います。対面がよいものなのか、意外と諸手を挙げて賛成とはならないのか、オンラインでは本当に代替できないのか、ヒューマン・エージェント・インラクションを扱う会議の中で実感を伴って考察を深めてもらえればと思います。
対象分野
HAIに関する理論的・実証的研究,各種応用システム開発事例などを広く募集します.たとえば,以下のようなテーマが該当しますが,これに限定されるものではありません.
- 人とインタラクションを行うエージェント/ロボットの設計・実現方法
- エージェント/ロボットを介した人同士のコミュニケーション
- エージェントによるヒューマンインタフェース
- 認知科学,社会心理学,進化心理学,発達心理学におけるHAI
- エージェント/ロボットの倫理
- 人とエージェント/ロボットの相互適応
- 適応・学習を可能にするインタラクションの設計
- エージェント/ロボットのアピアランス,表情,ジェスチャーの設計
- 意図,エージェンシーの認知,アニマシー知覚
- 人とエージェントの関係性
- エージェント/ロボットの身体性
- インタラクションを可能にする知能の解明と実現
- インタラクションを通して生まれる知能の解明と実現
- 認知発達ロボティクス
- 記号創発ロボティクス
- HAIの要素技術…ユーザ状態の推定/学習,エージェントの適応/学習,エージェントの音声合成/認識
- 人工知能技術,深層学習などを用いたエージェント/ロボットにおける知能の理解・設計およびインタラクションのデザイン
- CMC(Computer Mediated Communication)環境における身体的なインタラクション
- HAIの応用事例など
過去のプロシーディングス(こちら)もご参照ください.