2024年3月5日(火)・6日(水)静岡大学浜松キャンパス

運営委員長挨拶 大本義正(静岡大学)

HAIシンポジウムも18回目となりました。今年度は、社会全体として新型コロナウイルスの非常態勢から通常体制へと移行する年でした。様々な制約が取り払われる一方で、未だに影響の残るところもあり、バランス感覚が試される年であったように思います。

エージェントに関わる研究関連の話題としては、ChatGPTが大きく広まったことがあげられるでしょうか。以前から存在していましたが、社会的に認知されて一般的になっていったのは今年度のことかと思います。逆に言えば、広まってからまだ1年程度ということでもあります。様々な亜種が生まれ、本家も進化を続け、まだまだ勢いは止まりそうにありません。便利になる一方で、どのように使用するのかについてもそれぞれの組織で議論にあがったことがあるのではないでしょうか。ついに「能力」ではなく「使い方」が議論されるようになったAIは、これからどのような方向に進んでいくのか、興味は尽きません。

知的な人工物との関わりについて、ヒューマン・エージェント・インラクションは早い段階から注目していたといえます。実際に知的に見える人工物が世の中に浸透してきたところで、我々の知見を生かしたり、深めたりすることができる環境が広がってきたということでもあります。皆様と対面でお目にかかり、活発な議論ができることを楽しみにしています。

対象分野

HAIに関する理論的・実証的研究,各種応用システム開発事例などを広く募集します.たとえば,以下のようなテーマが該当しますが,これに限定されるものではありません.

過去のプロシーディングス(こちら)もご参照ください.

招待講演

招待講演者:塩見昌裕先生(ATR)

タイトル:身体性と存在感で深化するヒューマンエージェントインタラクション

概要:

本講演では、これまでにATRで進めてきた人とエージェントの触れ合いを伴うソーシャルタッチ研究を中心に、複数台のエージェントが人と関わり合うソーシャルダイナミクス研究についても概観し、人とエージェントが共生する未来社会に向けて必要となるインタラクションデザインについての議論を進めます。 人とエージェントが物理的に触れ合うソーシャルタッチインタラクションにおいては、不安を感じさせず心地よい感触をもたらすためのインタラクション技術が必要となります。そこで我々は、人とエージェントが安全に触れ合うために必要となるセンサやハードウェアに加えて、エージェントが常識的な触れ方を行うための人間理解に関する研究を進めてきました。さらには、エージェントが人に触れる前から触れた後までのインタラクションを一貫して扱うための触れ合い技術に関する基礎研究や、保育支援・介護支援といった触れ合いを伴うエージェントとのインタラクションがどのように社会に貢献しうるかを探索的に検証する応用研究についての紹介を行います。 また、様々なエージェントと日常的に関わりつつある現代社会において、今後も活動するエージェントの台数は増加の一途をたどるでしょう。そのような状況においては、複数のエージェントが連携し、人のグループのように振る舞うことも増えていきます。そのような共生社会を迎える前に、複数台のエージェントが人と関わり合うインタラクションにおいて、人間がエージェントから構成される社会的集団からどのような影響を受けるのか、すなわちソーシャルダイナミクスの影響をあらかじめ理解しておく必要があります。そこで我々は、複数のエージェントを用いた情報提供や学習支援、街角でのサービスを想定した状況において、その台数が人々の振る舞いや印象にどのような影響をもたらすかの検証を進めてきました。 本講演では、エージェントとのインタラクションが物理的にも空間的にも密となる未来社会において、エージェントとの関わり合いが我々にどのような変化をもたらすかについて、その応用可能性や社会的受容性についても広く議論したいと思います。